三株山-古内

しばらくして風が強くなってきた、尾根の近い証拠だ。
雑木の間から北の山並みが見えてくる。再びバラ線を越すと牧場の草地である。畜舎が見え放牧の牛が集団で草を食んでいる。
尾根伝いに行くと南西方面に八溝山系と那須連山が霞んで見える。近くには鎌倉岳から矢野山、入道山そして蓬田獄、芝山、犬仏山、大辷山と続く。旅人も遥か仙道の山並みを見ては、安堵・一服を付けたことだろう。
牧場の管理舎に寄り昼食を済ませる。
午後は俗称「逆櫟」と呼ばれる地を通り「山の神」を目指して尾根伝いに下る。
三株放牧組合当時の牧舎も修復されている。この谷間から三株の地下水は流れ出し山の神の林の中で瀬になっている。二本の老杉も放牧地時代の山焼きの被害を受けているがこの林で休息した旅人の話し声や餌を食む牛馬の鳴声が老杉に染みついているのではないかと思う程である。谷川沿いに道を拾いながら下る。荒れ た水田を横に見て小さな峠を越えると杉林になる。
ここからは立木の間に旧道がはっきり見える。雪割倒木に邪魔され、又雑木も生き返っているが、幾星霜牛馬に踏まれそして雨に流されて低くなっている道型である。

山刀を振りながら二〇〇米程、進むと堀切に出る。今度は雑木林の中の道になる。

熊笹が繁り朽ちた雑木が横倒しになっている旧道を下る。爪先が痛い。この道が浜と仙道を結んだ道の一つとは

この時代に生きた人々の苦労を思いやられたが、それにも増して戦後三株開拓の主要道として私達の知人が肥料、食糧、日用品を自分の背で運び上げた苦労がつい三十数年前までの事実であることを思えばあまりにも恵まれている現在の生活と対照して感無量である

風音に誘われて道の土手に登ると八ヶ久保の日向方面が真下に見える。

一旦道は沢に下り谷川沿に行くと美事な杉林の前に出る。前回探訪の折はこのまま谷を下り八ヶ久保に出てしまった。

一服しながら振り返って見ると今下って来た峠からの道は頭上にあるような感がする。今度は慎重に道を探すと杉林の中を細く横切っているのを見付ける。

鼻歌まじりに行くと俗称「牛ころばし」の峠に出る。その名の通り相当な急傾斜である。牛は急傾斜の道は膝をついて登るという話を聞いたことがある。小刻みに坂を下って行く。しばらくして平地の林の中を歩いていた二羽の山鳥に遭う。

間伐をした美事な杉林の道を小松川沿に行くと古内の製材工場が向い側に見える。旧道はこのまま川沿を登り瀬を渡って通称「めでいら(梅平)」に出て古内-荷市場線に続くのである。

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